聖書人物伝:新約 5 シモン・ペテロ上

新約聖書は、ペテロなくして語れないほどの立役者であり、福音書では使徒の名簿を4回紹介しますが、必ず、先頭に名前を連ねているのはペテロです。他にも彼は160回も名前が出ています。誰よりも主とかかわった人間と言えるペテロ。そのペテロを通して、イエス様の真実が見えると言えます。今回は、大使徒ペテロについて学びます。

1.生い立ち、家柄

彼はヨハネの子と紹介されています(ヨハネ1:42)。名前はシモンで、ペテロはイエス様から直々につけられたあだ名です。仕事は漁師です。ベッサイダ出身(ヨハネ1:44)で、カペナウムに移住して住んでいました(ルカ4:31)。そのカペナウムのペテロの家はイエス様のガリラヤ伝道の時の宿として利用しています。12弟子の一人アンデレは彼の弟に当たります。家族持ちで、イエス様の昇天後は妻を連れて伝道していたようです(1コリント9:5)。弟子たちの中では、だいぶ年配だった可能性があります。

2.ペテロの性格

① リーダーシップ

ペテロは、外部の人たちが見てもすぐに使徒たちの中のリーダー格というのがわかりました。

「また、彼らがカペナウムに来たとき、宮の納入金を集める人たちが、ペテロのところに来て言った。・・」マタイ17:24.

重要な会議があると議長の役割はペテロです。

「そのころ、百二十名ほどの兄弟たちが集まっていたが、ペテロはその中に立ってこう言った。」使徒1:15.

② 積極的で好奇心旺盛な人

イエス様が湖の上を歩いている場面で、他の弟子たちは恐怖で怯えていましたが、一人ペテロだけが、自分も歩きたいと言って、実際に歩くことができました。

「すると、ペテロが答えて言った。「主よ。もし、あなたでしたら、私に、水の上を歩いてここまで来い、とお命じになってください。イエスは「来なさい。」と言われた。そこで、ペテロは舟から出て、水の上を歩いてイエスのほうに行った。」マタイ14:28-29.

③ 極端な人

「シモン・ペテロが答えて言った。『あなたは、生ける神の御子キリストです。』」 マタイ16:16

人々がまだイエス様のことを「先生」とか「預言者」だと認識していた時期に、ペテロは誰よりも早く、メシアだと告白しました。この告白をイエス様はたいへん喜ばれています。その喜びに浸るすぐ後に、今度はひどい叱責を受けました。

「しかし、イエスは振り向いて、ペテロに言われた。「下がれ。サタン。あなたはわたしの邪魔をするものだ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている。」 マタイ16:23.

同じ時間内で、一方では父なる神に導かれて信仰を告白し、一方でサタンに欺かれる。人間の心というものは、そのような翻弄されるものだというのがわかります。ペテロは天国の鍵を受け取れる喜びに浸った次の瞬間、悪魔扱いされるという、両極端な信仰をもった人です。

それ以外にも、イエス様が足を洗おうとしたらペテロは恐縮して、「決して私の足をお洗いにならないでください。」と断り、イエス様が、「もしわたしが洗わなければ、あなたはわたしと何の関係もありません。」と言われると、「主よ。私の足だけでなく、手も頭も洗ってください。」 ヨハネ13:8-9.と極端に答えました。イエス様の言われる言葉にそのまま反応する、単純でわかりやすい人です。

④ 預言者的性格をもった人

ペテロがペンテコステの日に説教した時、人々は「これを聞いて、心を刺され」とあります。(使徒2:37).それ以外にも、アナニヤとサッピラの罪(使徒5:1-11)を見抜いたり、魔術師シモンの心を見透かしたり(使徒8:23)とペテロは厳しい預言者的な賜物があり、人々を悔い改めに導くことができました。

⑤ 素直で従順な人

漁師でありながら、漁に関して素人と思えたイエス様のアドバイスに、素直に従いました。

「するとシモンが答えて言った。「先生。私たちは、夜通し働きましたが、何一つとれませんでした。でもおことばどおり、網をおろしてみましょう。」 ルカ5:5.

そして、そのままご自分に従うように呼びかけた時、その場で網を捨てて従いました。

「イエスは彼らに言われた。「わたしについて来なさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう。彼らはすぐに網を捨てて従った。」マタイ4:19-20.

⑥ 勇敢な人

「シモンはイエスに言った。「主よ。ごいっしょになら、牢であろうと、死であろうと、覚悟はできております。」 ルカ22:33.

ペテロは誰よりもイエス様に忠誠を誓い、死を覚悟していました。結果は自分の弱さのゆえ裏切ってしまいましたが、直前まで敵に剣で応戦(ヨハネ18:10)していたことから、彼は勇敢な性格だと言えます。ローマに反乱を起こすのはいつもガリラヤ人だとと言われており、ペテロはその血を受け継いだ、漁師であり、気性の荒い人間です。

⑦ 名説教家

ペンテコステの日の聖霊が下った後、集まってきた群衆に、ペテロは真っ先に説教を始めました。

「そこで、ペテロは十一人とともに立って、声を張り上げ、人々にはっきりとこう言った。・・」使徒2:14.

その説教の内容は、まずペンテコステの聖霊降臨に関する旧約聖書を引用し(2:16-21、25-28)、次に聖書の解釈をし(2:22-24、29-35)、最後に彼らに適用して、勧めの言葉を話しました(2:36―40)。この説教によって一日で三千人が救われるという大伝道集会になりました。これは説教学においても模範的な説教と言われ、漁師であったペテロが、しかも即興で話したことから、彼が名説教家として卓越した賜物を持っていることがわかります。

最後に:

ペテロの生き方を一言で言い表すなら「愚直」と言ったらいいでしょうか。現代は人間関係が複雑になり、「人の心の裏を読む」「勘ぐる」という言葉がよく使われるように、本音と建前を見分けなければいけない状況です。「空気を読む」と言うことが大切とされています。しかし、「空気を読む」とは本音が隠された集団に醸し出される本音を読み取ることのできる技術です。しかし、これは聖書的ではありません。聖書は裏表のない言葉を語ることを教えています。

「ですから、あなたがたは偽りを捨て、おのおの隣人に対して真実を語りなさい。」エペソ4:25

その点、ペテロは愚直なまでに真実な人でした。欠点も多く、ほめられると有頂天になり、しゃしゃり出たり、イエス様によく怒られる人でした。しかし、裏表がなく、気持ちのよいぐらい腹の中をさらけ出す性格です。心がむき出しな分、傷つき、誤解も生んでしまうでしょう。しかし、真実なイエス様とも直通で心が通うことができました。ですから、イエス様はペテロをこよなく愛されました。

ペテロはある時、自分の肉の考えから思い上がって、イエス様をいさめました。その結果、サタン呼ばわりされました。その出来事は自分が悪いとは言え、とても落ち込んだことと思います。そして、さらにイエス様が「わたしの肉を食べ、またそのを飲まなければ・・」ヨハネ6:53.という発言によって、多くの弟子たちがつまずいた時でした。そんな弟子がぞろぞろイエス様から離れていく場面で、心を痛めたイエス様は、12弟子たちに問われました。

「そこで、イエスは十二弟子に言われた。「まさか、あなたがたも離れたいと思うのではないでしょう。」ヨハネ6:67.

これは、寝食をともにした弟子たちがつまずいた中、一番信頼する12弟子への悲痛な問いです。イエス様と父なる神との関係は揺るぎないものでしたが、12弟子は信頼しているとは言え、罪深い人間です。彼らの心がどこまでイエス様とつながっているのか、それはイエス様にも量れないことでした。そんなイエス様の心を察して、はっきりとペテロが告白しました。

「すると、シモン・ペテロが答えた。『主よ。私たちがだれのところに行きましょう。あなたは、永遠のいのちのことばを持っておられます。 私たちは、あなたが神の聖者であることを信じ、また知っています。』」 ヨハネ6:68-69.

ペテロはその時、外からも内からも、大きく信仰が揺さぶれられていた時でした。それでも、イエス様に対する心は変わることがありませんでした。


「イエスは彼らに答えられた。「わたしがあなたがた十二人を選んだのではありませんか。しかしそのうちのひとりは悪魔です。」 ヨハネ6:70.

この一連の言葉は、福音書の中でも私が一番好きな個所です。イエス様と深いところでつながったペテロ。とてもうらやましく思います。自分もこうありたいと常日頃考えます。どんなに欠点があって不器用でも、ペテロのように真実な心でイエス様につき従いたいものです。

黙想と適用:

1.ペテロの良い所は、どんな事にも積極的にかかわって、チャレンジするところです。失敗を恐れず、人がどう思うか気にせず、いろんなことにトライしました。そのおかげで、他の弟子たちが経験できないことも体験しました。あなたもそのようなチャレンジ精神を持っていますか。

2.その信仰をイエス様に喜ばれる半面、サタン呼ばわりする部分もありました。信仰が引き上げられていると思っても、油断したり、有頂天にならないように気をつけましょう。

3.イエス様の呼びかけには、迷いなく素直に従うペテロのように、いつでも主に従う柔軟な心を持っているでしょうか。

4.裏表のない真実な心で神と人に接しているでしょうか。